香　川

　家づくりの際にまず思い描いたのは、以前住んでいた直島で印象に残った、とあるアート作品だったというIさまご夫婦。日本家屋の様式美を残しつつ、かしこまりすぎないモダンな姿に魅了されたという。その時の思いを家づくりにも生かし、焼杉の外壁や深い軒、長いアプローチなどを取り入れた。細長い敷地に中庭を設け、平屋のリビングと2階建ての個室部分で挟むような間取りに。正面から見ると平屋に見え、より理想に近いシンプルな形になった。
　リビングは道路側に面しているが、駐車スペースや焼杉の塀、庭の緑が目線や音を和らげ、車の行き来も気にならないと語るご夫婦。室内の素材にも木を多く用い、落ち着きのある空間に。来客も訪れるリビングの床板には木目の美しいアカマツを、子ども部屋などのプライベート空間には素足にも心地よいヒノキをと、素材を使い分けた。大黒柱は、仲南の山で家族が見守る中伐採されたもの。新鮮な木の香りが室内に漂う。
　平屋部分のリビングは、壁と天井に同じ素材を使うことで境目がつながり、部屋を広く見せている。リビングからは、中庭を挟んだ畳の間も見え、いつも家族の気配を感じることができる。
　縁側としても使える廊下や、ウッドデッキのある中庭など、お気に入りが詰まったIさま邸。木漏れ日がやさしく揺れる住まいで、Iさん家族はまちなかにいながら緑のある暮らしを満喫している。