愛　媛

　築50年の老朽化が進んだわが家。将来も安心して暮らすためには、大規模なリフォームが必要。それならばと、実家は母屋としてそのまま残し、敷地内へもう一邸新築することを決意した。設計上のポイントは、将来も安全なつくりであることと、家族が穏やかに過ごせること、そして母屋の庭を家族で一緒に楽しめること。これらの要望に見事に応えたのが、施主に寄り添った住まいづくりを徹底している「タニグチ」と設計監理を務めた「SHPデザインスタジオ」だ。
　実現したのは、暮らしやすさを第一に考えたバリアフリーで段差のない平屋。切妻屋根を生かした勾配天井が生み出す開放的な空間に、車椅子も難なく乗り入れられる広さと奥行きを備えた玄関。広くゆったりと余裕を持たせた廊下の幅で、緊急時も慌てることなく対応が可能だ。LDKには個室を隣接し、部屋の中にトイレと洗面を設けることで移動距離を短縮。体の負担を軽減しながら、家族とのつながりを感じられる間取りに安心感も増す。
　あちらこちらに設けられた大開口から差し込む自然光。その明るさや暖かさに安心感を覚えながらふと外に目をやれば、池にはコイが悠々と泳ぎ、木々が風を受けて揺れている日本庭園の様子が心を癒やす。盆や正月には、祖父の仏間や和室のある母屋に集まった親戚と、Iさまが幼い頃から親しんだこの庭を眺めて思い出話に花を咲かせる。中廊下が暗くならないようにと同社からの提案を受けて設けた、玄関ホールの2つの坪庭は新居のどの部屋からも眺められるように。今ではIさまの穏やかな生活時間には、庭の緑が必要不可欠となっている。