愛　媛

　閑静な住宅街の一角で落ち着いた佇まいを見せ、陽光を浴びた焼杉板の壁がしとやかな輝きを放つNさま邸。上質な空間で家族一緒の時をゆったりと過ごし、それぞれが好きなことを没頭して楽しめる場所もある家。「具体的な要望は特段なかった」というご夫婦に対して 「シムデザイン」が提案したのは、そんな「オトナの住まい」だ。全体的に飾り気のないシンプルな意匠ながらも、ソリッドな空間の端々に織り込んだアール部分や、照明・コンセント・スイッチといったアイテムを極力見えなくする工夫、素材の配置・組み合わせ方など、程よく調和を崩すことでひと癖あるデザイン性を実現している。これがたった2回の打ち合わせでカタチになったというのだから驚く。
　Nさま家族の日常の動作を効率的にまとめつつ、家族同士が程よい距離感を保つことができるよう考え抜かれた設計の妙が光る。玄関を入ると真正面にナツハゼの木が揺れるピクチャーウインドーが出迎える。玄関ホールから２階へと続く階段がリビングの吹き抜けを通るようにした巧みな設計も遊び心をくすぐる。家族が集うLDKはすっきりコンパクトにまとまった印象ながらも、採光や家事動線にも配慮された居心地の良い空間。ご主人が仕事をしたり子どもたちが遊べる小上がりの畳スペースも機能性抜群だ。キッチンや洗面台といった住宅設備や建具類は、それぞれの家に合わせて造作と規格品を巧みに織り交ぜ、無理のない予算でオリジナリティーを実感できる住まいを提供したいという同社の思いが、この家の隅々にしっかりと宿っている。