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「いとをかし」 畳の世界 ②畳の構造と規格

日ごろ見慣れた畳も、実際にはどういう構造をしているのか知らないという人も多いのではないだろうか。さらに、畳のサイズも地域によって大きさが異なるということも、初耳だという人がいるかもしれない。畳のサイズは部屋の広さを表す単位として使われており、大まかにでも知っておけば、家の間取りを考える際などに役立つはず。ここでは畳の基本的な構造や、地域などで異なる畳の規格サイズについて解説する。

<取材・文/鎌田 剛史>

畳の構造

畳は大きく分けると、表面に見える「畳表」と、芯の部分に当たる「畳床」に、「畳縁」を縫いつけたもので構成されている。

畳表(たたみおもて)

「畳表」はイグサを主原料として作られ、イグサを緯糸に、麻や木綿の糸を経糸として織った織物。イグサは染土を溶かした泥水で泥染めしてから乾燥させる。緯糸に使うイグサには「丸藺」「太藺」「七島藺」の3種類があり、このうち丸藺が最も多く使われている。丸藺と太藺はイグサ科で茎の断面が丸いのが特徴で、丸藺の茎の直径が約1㎜なのに対し、太藺はその倍ほどの太さがある。七島藺はカヤツリグサ科で、茎の断面が三角形。茎を2つに裂き緯糸として使用する。
イグサの栽培はかつて広島県や岡山県で盛んだったが、現在の主産地は熊本県八代地方で、栽培面積・生産高が共に全国の約95%を誇る。近年の国内におけるイグサの畳表流通量は、低価格の中国産がほとんどを占めており、国産イグサの栽培農家・作付面積も大幅に減少している。

畳床(たたみどこ)

「畳床」は、何層も重ねた稲わらなどを縫い固めた厚みのあるパネル状の芯材。古くは稲わらを互い違いに重ねて圧縮し、縫い合わせて作っていた。大正時代末ごろに製畳機が登場し、生産効率が大幅に向上。時代とともに稲作の機械化が進み、長い稲わらの入手が難しくなると、わらの芯に建材を入れた畳床が開発され、加工しやすく、軽量で運搬しやすいことなどから広く普及した。現在は断熱性や耐湿性に優れ、軽量で防カビ・防虫の工夫が施されたポリスチレンフォームやインシュレーションボードが主流。このほか、新素材と稲わら両方の長所を生かしたサンドウィッチタイプなど、さまざまな畳床がJISに基づいた品質基準の下で生産されている。

畳縁(たたみべり)

「畳縁」は畳の長辺に縫い込んだ布で、畳表と畳床を合わせるために一緒に織り込んだもの。畳の角の部分が擦れてイグサが破れるのを防ぐ補強材としての役割も担う。かつては畳縁の色や柄で座る人物の身分の違いなどを表していた。畳縁にはシンプルな無地のものと、柄の入った柄縁がある。昔は綿糸や麻糸をろう引きし、ブラシで磨き上げた黒または茶色の糸が使って作られていたが、 現在では化学繊維で織られたものが主流に。

畳の規格サイズ

畳1枚の縦横比は全て2:1で統一されているが、その大きさは種類によって異なる。畳の種類として主に「京間」「六一間」「中京間」「江戸間」「団地間」の5つが挙げられる。それぞれの大きさにどれくらい違いがあるのか、6畳間で比較してみよう。

京間(きょうま)

「本間」「関西間」とも呼ばれ、主に茶室や書院などを設計する際の基準とされている。発祥は桃山時代といわれ最も歴史が長く、主に西日本で使用される。

六一間(ろくいちま)

岡山県、広島県、山口県など中国地方の一部で使われている畳。縦の長さが6尺1寸であることが名前の由来で「広島間」「安芸間」とも呼ばれる。

中京間(ちゅうきょうま)

畳の縦が6尺、横が3尺あることから「三六間」とも呼ばれ、愛知県、岐阜県、三重県の中京地域のほか、北陸や東北の一部地域でも使用されている。

江戸間(えどま)

縦の長さが5尺8寸あることから「五八間」と呼ばれ、「関東間」「田舎間」の呼び名もある。関東地方をはじめ、静岡より北の地域で主に使用されている。

団地間(だんちま)

高度経済成長期に多くの団地が建てられたことから生まれた規格。一定の基準は定められていないが、85×170㎝のサイズが一般的に多く使われている。

畳にはいろんなサイズがあり、地域ごとに異なるのはなぜか。

畳にはさまざまな規格サイズがあり、国内の各地域によって使われる種類が異なっている。このように多彩な種類の畳が存在する背景には、畳寸法の単位である「一間」の長さが時代とともに変わったことにあり、織田信長の時代は一間が6尺5寸だったのが、豊臣秀吉の時代に6尺3寸へ、さらに江戸時代には6尺へと変化していき、これが畳の大きさにも影響したものと考えられている。
また、家の建て方により畳寸法の決め方が違ったことも理由の一つで、関西では畳寸法を基準とした「畳割り」が、関東では柱の中心間の距離を基準とした「柱割り」が一般的で、それぞれの建て方によって畳寸法が違ってくることから、地域ごとに違うサイズの畳が生まれたといわれている。現代では設計を元に部屋の広さに合うよう採寸・調整して作られ、畳の大きさがどの種類にも当てはまらないケースがほとんどだ。

この記事を書いたのは…
瀬戸内民家シリーズの雑誌表紙

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

畳の歴史やその魅力をはじめ、瀬戸内で畳文化を守ろうと情熱を注ぐ人たちを徹底取材した記事は、ぜひ本誌でチェック!!

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