SETOUCHI MINKA

瀬戸内6県 美しい歴史の町並みガイド。

瀬戸内各県には歴史的情緒あふれる町並み地区がたくさんある。令和4年12月現在、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている各県の町並みをピックアップ。文化庁ホームページも参考にして、足を運んでみて。

<取材・文/鎌田 剛史>

この記事を書いたのは…
瀬戸内民家シリーズの雑誌表紙

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

兵庫県の重要伝統的建造物群保存地区

神戸市北野町山本通

兵庫県神戸市 ●種別/港町 ●選定/1980年 ●面積/9.3ha

写真提供/神戸市文化スポーツ局 文化財課

重要文化財の「旧トーマス住宅」や「小林家住宅」をはじめ、30棟以上の異人館と呼ばれる洋風建築が点在し、さらに明治末期から昭和初期までに建てられた良質な和風建築も共存。

豊岡市出石

兵庫県豊岡市 ●種別/城下町 ●選定/2007年 ●面積/23.1ha

写真提供/豊岡市出石振興局 地域振興課

出石城跡や城下町の街路、町人地における敷地の間口など、文化7年(1810)の出石城下町絵図の状況をよく維持し、但馬地方における城下町の歴史的風致を現在に伝えている。

丹波篠山市篠山

兵庫県丹波篠山市 ●種別/城下町 ●選定/2004年 ●面積/40.2ha

写真提供/丹波篠山市教育委員会 文化財課

史跡に指定されている篠山城跡、茅葺の武家住宅群、妻入りを主体とした特徴的な町家が密集する商家群、要所に配置された寺院など城下町の面影を今に伝えている。

丹波篠山市福住

兵庫県丹波篠山市 ●種別/宿場町・農村集落 ●選定/2012年 ●面積/25.2ha

写真提供/丹波篠山市教育委員会 文化財課

妻入りを主体とした厨子二階建瓦葺の町家が建ち並ぶ宿場町の町並みと、平屋建茅葺の農家住宅が立ち並ぶ農村集落という二つの異なる町並みが西京街道沿いに連続して残されている。

養父市大屋町大杉

兵庫県養父市 ●種別/山村・養蚕集落 ●選定/2017年 ●面積/9.3ha

写真提供/養父市 社会教育課

養蚕を発展させるために成立した木造三階建の特色ある農家主屋が、谷川の水を活かした集落の構成や水路、石垣などとともに地方色豊かな歴史的風致を伝えている。

たつの市龍野

兵庫県たつの市 ●種別/商家町・醸造町 ●選定/2019年 ●面積/15.9ha

写真/鈴木 トヲル

16世紀末までに龍野城下に形成され、近世以降、醤油醸造の一大産地に発展した町。江戸時代に形成された町割りを残すとともに、軒が低く大壁造の古式な町家や醸造に関わる重厚な土蔵等をよく残し、中世を起源とする西
播磨の城下町としての町並みを形成している。

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岡山県の重要伝統的建造物群保存地区

倉敷市倉敷川畔

岡山県倉敷市 ●種別/商家町 ●選定/1979年 ●面積/15.0ha

写真/鈴木 トヲル

標高36.8mの鶴形山の南麓、倉敷川を中心とする地区。寛永19年(1642)に幕府の直轄地となり、年貢米や農産物が集散する商業港としての役割を担った。こうした経済的繁栄により、次第に富を蓄積した有力商人層が台頭してくることとなり、やがて本瓦葺塗屋造りの町屋と土蔵造りの蔵を中心とする町並みが形成された。

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⑧津山市城東

岡山県津山市 ●種別/商家町 ●選定/2013年 ●面積/8.1ha

写真提供/津山市 歴史まちづくり推進室

江戸時代の町家を主体として昭和戦前期までに建築された主屋は、切妻、平入りを基本とした厨子二階建てとし、出格子窓、虫籠窓、なまこ壁、袖壁を使用した優れた意匠の伝統的建造物が建ち並ぶ。

⑨津山市城西

岡山県津山市 ●種別/寺町・商家町 ●選定/2020年 ●面積/12ha

写真提供/岡山県観光連盟

津山市城西伝統的建造物群保存地区は、津山城下町の西部に成立、発展した寺町・商人町である。出雲往来を軸とした近世以来の地割りの姿が残り、寺町は江戸時代の様相を伝える伽羅とともに、慶長期以降各時代、各宗派の寺院建築が現存している。商家町は、往来沿いに近代の発展を示す伝統的な町屋が立ち並んでいる。

高梁市吹屋

岡山県高梁市 ●種別/鉱山町 ●選定/1977年 ●面積/6.4ha

写真提供/高梁市 社会教育課

銅山とベンガラで繁栄した鉱山町で、町家主屋や土蔵などが建ち並んでいる。屋根は赤褐色の石州瓦で葺かれ、赤い土壁や白漆喰壁の平入・妻入の町屋が混在し、地方色豊かな町並み景観を呈している。

⑪矢掛町矢掛宿

岡山県矢掛町 ●種別/宿場町 ●選定/2020年 ●面積/11.5ha

写真提供/岡山県観光連盟

山陽道の宿場町として栄えた矢掛町。街道沿いには江戸時代後期までに形成された地割に,妻入と平入の町家が混在した変化ある屋並みが見られる。江戸時代の旧本陣と旧脇本陣がそろって残っているのは全国でもここだけで、 国の重要文化財に指定されている。漆喰塗込の重厚な町家など、江戸時代から近代に建てられた伝統的建造物が軒を連ね、山陽道の宿場町の歴史的風致を今に伝えている。

広島県の重要伝統的建造物群保存地区

⑫呉市豊町御手洗

広島県呉市 ●種別/港町 ●選定/1994年 ●面積/6.9ha

写真提供/呉市 文化振興課

間口が狭く奥行きの長い妻入りの町屋と、棟割長屋に代表される平入りの町屋が多い。大正から昭和初期建設の洋風建築も点在し、瀬戸内の潮待ち、風待ちの港としての歴史的風致を伝えている。

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⑬竹原市竹原地区

広島県竹原市 ●種別/製塩町 ●選定/1982年 ●面積/5.0ha

写真提供/竹原市教育委員会 文化生涯学習課

竹原市竹原地区は、町人たちの江戸時代からの営みの痕跡を今に留めている。寺社を彷彿とさせる本瓦葺き、灰色漆喰の重厚な大規模住宅が連なる様は、見る者を圧倒する。

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⑭福山市鞆町

広島県福山市 ●種別/港町 ●選定/2017年 ●面積/8.6ha

写真/鈴木 トヲル

瀬戸内海に突き出た沼隈半島南東部に位置し、潮待ちの港としての好条件を備え、古来、海上交通の要衝として栄えた町。中世の骨格を引き継ぎながら江戸中期までに整えられた地割に、江戸時代からの伝統的な町家や寺社、石垣などの石造物、港湾施設などが一体となって良好に残り、瀬戸内の港町としての歴史的風致を良く伝えている。

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⑮廿日市市宮島町

広島県廿日市市 ●種別/門前町 ●選定/2021年 ●面積/16.8ha

宮島の町並みを見下ろす弥山。 写真提供/広島県

廿日市市宮島町伝統的建造物群保存地区は、 かつて厳島神社の門前町として栄えたエリアで 、 弥山が海に迫る海岸の狭隘地に形成された西町と東町には、江戸時代後期までに形成された特徴ある地割が残っている 。 江戸時代から昭和 20 年代に至る伝統的な町家や和風住宅が、山麓に位置する寺社建築や社家住宅と一体となって、 厳島神社の周囲に栄えた門前町の風情を今に伝えている。

山口県の重要伝統的建造物群保存地区

萩市堀内地区

山口県萩市 ●種別/武家町 ●選定/1976年 ●面積/55.0ha

写真提供/萩市 文化財保護課

近世城下町の武家屋敷としての地割が今もよく残り、土塀越しに見える夏みかんとともに歴史的風致を形成している。現在も地区内には永代家老の益田家の物見矢倉など十数棟の武家屋敷が残る。

萩市平安古地区

山口県萩市 ●種別/武家町 ●選定/1976年 ●面積/4.0ha

写真提供/萩市 文化財保護課

橋本川沿いに江戸時代の地割りをよく残し、当時の屋敷構えをうかがえる。武家屋敷の主屋、長屋門、長屋、土蔵が、鍵曲を構成する長い土塀とともに残り、藩政期の姿をよく留めている。

萩市浜崎

山口県萩市 ●種別/港町 ●選定/2001年 ●面積/10.3ha

写真/鎌田 剛史

江戸時代以来の街路、敷地割がよく残り、南北を走る本町筋を中心に江戸時代から昭和初期に建てられた町家が数多く残る。

萩市佐々並市

山口県萩市 ●種別/宿場町 ●選定/2011年 ●面積/20.8ha

写真提供/萩市 文化財保護課

江戸初期に萩往還の整備に伴い、宿駅機能を備えた町並みとして整えられた。近年まで地割に大きな変化はなく、当地の特徴を示す伝統的な建築物や工作物、環境物件が一体となって数多く残る。

柳井市古市金屋

山口県柳井市 ●種別/商家町 ●選定/1984年 ●面積/1.7ha

写真/鈴木 トヲル

本町通りに面して建つ町家は妻入、本瓦葺、二階建で、漆喰壁の大壁造が基本。中に平入りのものが混じるが、前面の庇の軒線はそろい、町並みに統一感をあたえ、また2階壁面に開く窓は、建ちの高い建物の正面の意匠を調和よいものにし、漆喰壁の白壁に深い陰影をつけ、大壁造の重厚な町家を引き立たせている。

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香川県の重要伝統的建造物群保存地区

丸亀市塩飽本島町笠島

香川県丸亀市 ●種別/港町 ●選定/1985年 ●面積/13.1ha

写真/池田 知英

大小の島々からなる塩飽諸島の中心ともいえる本島。戦国時代には塩飽水軍が活躍、江戸時代には海運業で栄えた。往時をしのばせる勤番所や古い町並みが残り、歴史情緒あふれる文化財の宝庫として有名。近年は「瀬戸内国際芸術祭」の会場にもなっており、海外からも大勢の観光客が訪れている。

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愛媛県の重要伝統的建造物群保存地区

西予市宇和町卯之町

愛媛県西予市 ●種別/在郷町 ●選定/2009年 ●面積/4.9ha

写真提供/西予市 経済振興課 町並み推進係

江戸時代から昭和初期の町家が残り、妻入りと平入りが混在した町並みである。また、近代に欧米の影響を受け、外観に洋風意匠を取り入れた建築物も見られる。

内子町八日市護国

愛媛県喜多郡内子町 ●種別/製蝋町 ●選定/1982年 ●面積/3.5ha

写真/船田 一徹

江戸時代後期から明治時代にかけて木蝋生産によって栄えた内子町。八日市護国地区にはその面影が今も色濃く残っており、約600mの通りに伝統的な造りの町家や豪商の屋敷が当時の姿で軒を連ねている。この地域独特の浅黄色の土壁と白漆喰が織りなすコントラストが美しい。

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<Tips>伝統的建造物群保存地区とはどんなところ?

写真/鈴木 トヲル

重要伝統的建造物群保存地区とは、城下町、宿場町、門前町など、全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存を図るため、1975年の文化財保護法の改正により制度が発足したもの。全国の市町村が伝統的建造物群保存地区を決定し、地区内の保存事業を計画的に進めるために、保存条例に基づいて保存活用計画を定める。国は市町村からの申し出を受け、国にとって価値が高いと判断したものを選定する。市町村の保存・活用の取り組みに対して、文化庁や都道府県教育委員会が指導・助言を行うとともに、市町村が行う修理・修景事業のほか、防災設備や案内板の設置などに対しての補助や、税制優遇措置を設けるなどの支援も行っている。
2022年12月現在で、瀬戸内各県では兵庫県6地区、岡山県5地区、広島県4地区、山口県5地区、香川県1地区、愛媛県2地区が選定されている。


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