SETOUCHI MINKA

瀬戸内最古の酒蔵、兵庫県【剣菱酒造】訪問記。

豊かな自然に恵まれた瀬戸内地域は、日本酒造りに必要な米、水、気候の条件がそろっている貴重な地域でもある。こうした良質な環境の下、瀬戸内沿岸の各県には、江戸時代から現代まで脈々と受け継がれている高度な技術で、美味い酒を醸し続ける酒蔵が多く存在。各蔵では、長年培った歴史と伝統を大切に守りつつ、現代の最新技術も取り入れながら、国内外の”酒呑童子”たちに愛される酒造りに精進し続けている。そんな数ある瀬戸内の酒蔵の中で、最も長い歴史を誇る酒造会社が兵庫県の「剣菱酒造株式会社」。今回は同社に訪問し、その製造現場を拝見しながら、酒造りに対する思いなどを伺った。

この記事を書いたのは…
お洒落な平屋の外観

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

幾多の苦難を乗り越えて、創業から500年。

「止まったままの時計でいろ」。1505年から続く「剣菱酒造」の家訓の一つであるこの言葉には、流行に左右されず信じた味を守れという意味が込められている。その姿勢を500年以上守り続けてきた同社だが、その道程は決して平坦なものではなかった。「長い歴史の中で、5軒もの蔵元の交代がありました」と4代目の白樫政孝社長は語る。

創業は稲寺屋。赤穂四十七士が吉良邸へ討ち入り前の出陣酒として飲んだことを機に大ブームが起きるが、製造量を守らず大量に酒造りをしたことで捕まり廃業となる。蔵元変更後も、政府が打ち出した税金対策に資金が枯渇、米騒動や関東大震災などといった出来事に見舞われるたびに蔵元の交代も幾度となく行われ、現在の白樫家に移ったという経緯がある。

「止まったままの時計でいろ」、「酒の味のための費用は惜しまず使え」、「お客様の手に届く価格でご提供する」。この三つが同社の家訓。創業500年以上にもわたる長い歴史の中で、変わることなく大切に伝承されてきた。変わらない味を守るために剣菱の味を知り尽くした白樫社長と従業員が利き酒をし、いつの時代も変わらない味をつくり続けているという。

流行は追わない。自分たちが信じた味を守り続ける。

白樫家が蔵元になった後、守り続けてきた味が脅かされる事件が起こる。太平洋戦争後、米不足により国から三倍増醸酒という水と醸造アルコールを足し、酸味料や糖類で補った酒を模した物の醸造が進められた。だが、「これまで守ってきた味が壊れてしまう」と、醸造を拒否。税務署から米の支給量を減らされても味を守る道を選んだ。

「止まった時計は1日の中で必ず2回重なります。お客さまの好みは時計のようにぐるぐる回りますが、それを追うと常に一歩遅れます。流行は変わるけれど必ずまた戻ってくるものだから、信じた味を守り続けます」と白樫社長は言葉に力を込める 。昔もこれから先も変わらないというまっすぐなその言葉には、酒造りへの情熱が込められていた。

美味い酒を造るために必要なものは、良質な米と水、腕の良い杜氏。さらに、先人たちの知恵と職人の技が宿る「物」を巧みに使いこなし、酒へと宿す「者」。それらがすべてそろってはじめて「剣菱」となる。同社ではこの理念を現在でも大切に守り続けている。米を蒸すための木製の甑(こしき)や、麹づくりに使われる麹蓋(こうじぶた)、菰樽(こもだる)など、昔ながらの道具のほとんどを自社で製造。専属の腕利き職人たちが、一つひとつ丹精込めて作り上げている。

代表銘柄 黒松剣菱

食事をしながら飲むのに適した、伝統的な食中酒を展開。近年、電子レンジで温め可能な180mlサイズのものを開発し、グッドデザイン賞を受賞した。

【Editor’s TASTING!】
口に含んだ瞬間に濃厚な香りが膨らむ「黒松剣菱」。米の豊潤な味わいを引き出しており、鮮やかなキレが上品で心地よい余韻を残す。

<1505年創業>
剣菱酒造株式会社

【本社】兵庫県神戸市東灘区御影本町3-12-5 
【浜蔵兼瓶詰工場】兵庫県神戸市東灘区深江浜町53-10   
078-451-2501 http://www.kenbishi.co.jp
※酒の販売・蔵の見学は行っておりません。

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