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瀬戸内の風土と暮らす。~第2回「瀬戸内の気候について」~

目の前に瀬戸内海、背後には中国山地と四国山地を構える瀬戸内地域の自然環境。そしてその自然に育まれた人文化と歴史。家の窓からのぞく遠くの山々、街に点在する田畑やふるさとの料理。これらは全て「風土」をひもとくことで、地続きにあることが理解できる。「風土」を知り、瀬戸内がどのような地域であるのかという解像度を上げることで、暮らしは豊かになるのではないだろうか。全5回に分けて、本誌に掲載しきれなっかった情報を織り交ぜつつ、瀬戸内の風土についてレポートしていく。

今回は第2回「瀬戸内の気候について」。瀬戸内の気候と言えば、「温暖少雨」。この気候的特徴を紐解いていこう。

この記事を書いたのは…
お洒落な平屋の外観

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

温暖少雨な気候も、「瀬戸内」ブランド。

「瀬戸内海式気候」

 瀬戸内地域の気候的特徴といえばやはり、温暖少雨。温暖で雨が少なく、晴れが多いという気候は理想的とさえ言える。年間平均気温は約16度で、日照時間も長く暖かい。さらに年間の平均降水量が約1000~1600mmと少ない上に、雨日数も少ない少雨傾向にある。梅雨時期と秋の台風時期の降水量は他地方と同様に多くなるが、それらに挟まれた真夏の降水量は著しく少ない。瀬戸内地域の持つこれらの気候的特徴は、「瀬戸内海式気候」という気候学的名称を与えられ、他地方の気候と区別されている。

 しかし例外的に、中国山地を越えてきたり関門海峡を抜けたりした寒気が、瀬戸内海の水蒸気を凍らせて四国山地にぶつかるために、讃岐山脈や石鎚山地では降雪量が多くなったり路面が凍結したりという現象が見られる。初夏でも十分に暑い内陸部と、肌寒さを覚えるほど涼しい山岳部を体感しに、山へ遊びに行ってみるのも良いかもしれない。

「日本の地中海」は、本当?

 よく「日本の地中海」と評される瀬戸内地域。ここで、ヨーロッパの地中海地域と少し比較してみたい。地中海の気候は「地中海性気候」と呼ばれており、これは日差しが強く乾燥する夏と、最も雨が降る季節が冬であるという特徴を持つ。梅雨のある日本国内には瀬戸内を含めて「地中海性気候」は存在しない。

 しかし、地中海の夏の乾燥した気候と、瀬戸内の乾燥した気候は類似しているのは確かであり、地中海でよく栽培されているオリーブや柑橘類の栽培が近年瀬戸内でも盛んに行われている。

「日本のサントリーニ」こと広島県「未来心の丘」

瀬戸内の「風」。

 瀬戸内海には、風にも特徴がある。空気は、熱い方へと流れていく性質があり、日中は熱くなっている陸に向かって海から空気が流れ、夜間には冷えた陸から海へと空気が流れる。この陸と海の空気の温度が一定になると、どちらにも空気が流れずに動きを止める。これが「凪(なぎ)」と呼ばれる現象だ。瀬戸内海は、海陸風が規則正しく吹くという特徴もあるため、「凪」が起こる条件が整いやすい。朝の一瞬と夕方の一瞬に起こる「凪」は、「朝凪」と「夕凪」と表現される。特に瀬戸内地域では、夕焼けの美しさが際立つ「夕凪」が有名だ。古来より、「凪」は安全に航海を行うための好条件とされており、「凪」を待って航海に出る「風待ち」という言葉がうまれた。現在も「潮待ち」と同様に、「風待ち」が港町の観光キャッチコピーとして浸透している。

 温暖で安定した気候は過ごしやすいという一方で、空気が乾燥しやすいという側面も持つ。これは、季節風が山地を越えることで多くの水蒸気を失い、乾燥した状態で瀬戸内地域に到達するためだ。このため、日照時間も長い瀬戸内地域では旱魃(かんばつ)に直面することがしばしばある。古くからこの問題に向き合ってきた瀬戸内の先人たちは、長く大きな河川から水を引いてきたり、「ため池」やダムを複数造ったりすることで対応してきた。国内の「ため池」が多い都道府県の上位三県が、兵庫県、広島県、香川県と瀬戸内地域が並ぶことからも、先人たちがいかにリスクヘッジを図ってきたかがうかがえる。私たちの生活は、自然の恩恵と先人たちの知恵や試行錯誤の上に成り立っているのである。

香川県「満濃池」/香川県観光協会より

参考文献

  1. 『瀬戸内海事典』南々社.2007
  2. 『海と風土-瀬戸内海地域の生活と風土』地方史研究協議会.雄山閣.2002
  3. 『新・瀬戸内海文化シリーズ1 瀬戸内海の自然と環境』柳哲雄.瀬戸内海環境保全協会. 1998
  4. 『新・瀬戸内海文化シリーズ2 瀬戸内海の文化と環境』柳哲雄.瀬戸内海環境保全協会.1999
  5. 『瀬戸内海の環境保全 平成13年度 資料集』瀬戸内海環境保全協会.2002.
  6. 『瀬戸内における水寛容を基調とする海文化』瀬戸内海環境保全協会.2015
  7. 『ふるさと日本の味9 瀬戸内・黒潮海の幸』第二アートセンター.集英社.1983
  8. 『瀬戸内海地域誌研究 第3輯』文研出版.1991
  9. 『宮本常一 瀬戸内文化誌』宮本常一.八坂書房.2018
  10. 『瀬戸内四国の自然』伊藤猛夫.六月社.1965

少しでも「へ~!」と思ってくれたら幸いである。知ることから得られる楽しみも、きっとあるはず。
第3回は「瀬戸内の大地について」をレポート。お楽しみに!

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