SETOUCHI MINKA

島曜日、景趣を探しに。日本の建築や庭文化を支えた石の島@岡山県

近年国内外から高い注目と人気を集めている瀬戸内の島旅。瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島は、それぞれに輝きのある特色を持っているが、共通しているのは、豊かな自然、のどかな町並み、レトロな建造物などが織り成す美しい景色にたくさん出会えること。どの島も実に多彩な「景趣」の宝庫であり、そんな叙情的な風景を求めて遠路はるばる訪れる人も多い。今回は「庭」をキーワードに、素晴らしい景趣を誇る島をピックアップ。その他の見所も合わせて、庭の景趣を楽しむ瀬戸内の島旅を提案したい。

<取材・文/鎌田 剛史 写真/鈴木 トヲル モデル/大田 陸功>

この記事を書いたのは…
瀬戸内民家シリーズの雑誌表紙

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

                         

伝統の銘石「北木石」が宿る島
岡山県笠岡市北木島

植物や土と共に庭を構成する素材として欠かせないのが「石」。瀬戸内地域は古くから良質な花崗岩の産地として名高い。香川県の「庵治石」「青木石」、愛媛県の「大島石」と並び、全国に銘石として名高いのが岡山県の「北木石」だ。笠岡市の南約16kmに浮かぶ北木島で採掘される石で、その起こりは江戸時代であると考えられ、現在も主に墓石や住宅のエクステリア製品などに加工される石が掘り出されている。2019年には香川県の塩飽諸島や小豆島と共に、「日本の礎を築いた石の島」として日本遺産に認定された。

* GARDEN SPOT 石切りの渓谷展望台(北木石の丁場)*

古より花崗岩の産出・加工が盛んであり、「石の島」として栄えてきた北木島。この島で採石される「北木石」は、大阪城の石垣や靖国神社の大鳥居、東京駅丸の内駅舎など、日本を代表する数多くの伝統的名建築に用いられてきた銘石だ。最盛期の1957年には、島内に127カ所の丁場(採石場)があったというが、現在も稼働しているのは2ヵ所のみ。そのうちの一つ「鶴田丁場」は、1892年から約130年にわたって採掘を行っている。地下に掘り進むほど良質な石が採れるといい、現在は海面から40m以上も深く掘り進んでいる。思わず足がすくむほどの断崖絶壁に設けられた「石切りの渓谷展望台」からは、高低差が100m以上もある丁場の全景を見渡すことが可能。風雨や潮風を受けてサビが浮き上がった石の断面や、石の品質を裏付ける経年変化など、長きにわたり脈々と掘り続けてきた丁場ならではのダイナミックな景色を堪能できる。

住所/岡山県笠岡市北木島町8300
☎️ 0120-68-2120

(鶴田石材 株式会社 本社採石場)
平日12:00~13:00、土日祝11:00~13:00 

年末年始休
入場料:一般1,000円、小学生500円 

※幼児は入場不可
https://kitagi.jp


石と共に生きてきた人々の魂が息づく島を駆け抜ける。

01 高速船で上陸(大浦港)

大浦港で島内を移動するための自転車を借りる。地元のおじさんたちが北木島出身のお笑いコンビ「千鳥」の大悟さんの実家への道のりを丁寧に教えてくれた。


02 諏訪神社

大浦港のすぐそばにある神社。島内では最も大きい神社で、風格のある鳥居や本殿が佇む。島の石材業の発祥を記した巨大な石碑なども鎮座している。


03 キタギアンコースト

島の道路は笠岡諸島で唯一の県道。全長約20kmで起伏が少なくサイクリングに最適なルート。多島美を望む海岸線区間は「キタギアンコースト」と呼ばれる。


04 港町散策(豊浦地区)

北木島の玄関口の一つである豊浦港。周辺には「メビウスの輪」をはじめとする石の現代アートや、レトロな旧郵便局、昔ながらの集落など見所も多い。


05 ケーズラボ

特製の笠岡ラーメンやカレーが絶品のカフェ、自転車やマリンレジャーグッズのレンタル、ビジターバースを用意した海の駅などを備えた北木島の観光拠点。土日のみ営業。豊浦港から徒歩1分、金風呂港から徒歩20分
住所/岡山県笠岡市北木島町10364-25
☎️0865-69-8814 
http://kslabo.info


06 ストーンミュージアム

「ケーズラボ」内にある施設で、北木島に今も息づく石材産業の歴史や文化を学ぶことができる。日本でも数少ない石の資料館。お土産用の石雑貨から高級石製品まで揃えたミュージアムショップや、石を使った体験コーナーも。
入場料/中学生以上600 円、小学生300 円、幼児無料


07 千ノ浜の護岸景観(北木のベニス)

石の積み出し港だった千ノ浜。採石の際の廃土や端材で造られた護岸が石の島の歴史を物語る。その独特な景観は「北木のベニス」の愛称で知られる。


08 北木島の丁場湖(北木の桂林)

採石場跡に溜まった雨水が生み出した壮大な湖の景観。その山水画のような景色は「北木の桂林」と呼ばれ、北木島ならではの名所として有名。


岡山県笠岡市 北木島

Kitagi Island 面積:7.48㎢

笠岡諸島で最大の面積を誇る島。人口は約800人。かつては「柴島」と呼ばれていたそうだが、「柴」の字が「北木」に書き換えられ、現在の名前になったと言われている。
北木島への航路は、フェリーは豊浦港・金風呂港に、高速船は大浦港・楠港に着くので注意。大浦港から豊浦港の間は自転車で約30分の距離。海沿いを走る道は信号がなく車の交通量も少ないので爽快なサイクリングを楽しめる。


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