SETOUCHI MINKA

島曜日、景趣を探しに。松の緑が鮮やかなカーデンアイランド@広島県

近年国内外から高い注目と人気を集めている瀬戸内の島旅。瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島は、それぞれに輝きのある特色を持っているが、共通しているのは、豊かな自然、のどかな町並み、レトロな建造物などが織り成す美しい景色にたくさん出会えること。どの島も実に多彩な「景趣」の宝庫であり、そんな叙情的な風景を求めて遠路はるばる訪れる人も多い。今回は「庭」をキーワードに、素晴らしい景趣を誇る島をピックアップ。その他の見所も合わせて、庭の景趣を楽しむ瀬戸内の島旅を提案したい。

<取材・文/鎌田 剛史 写真/鈴木 トヲル モデル/佐々木 彩音>

  

この記事を書いたのは…
瀬戸内民家シリーズの雑誌表紙

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

               

どこの風景も松の緑が鮮やか
広島県呉市下蒲刈島

広島県呉市の市街地から車で約30分。上蒲刈島、豊島、大崎下島、岡村島など、瀬戸内海の島々を結ぶ「安芸灘とびしま海道」の最初の島であり、玄関口とも言えるのが下蒲刈島だ。江戸時代から潮待ち・風待ちの船でにぎわい、朝鮮通信使の一行や参勤交代する大名が立ち寄るなど、海上交通の要衝としても栄えたこの島には、往時の歴史や文化を今に伝える美術館や資料館のほか、島全体を庭園とするために整備した多彩な施設や見どころが散りばめられている。

* GARDEN SPOT 松濤園 *

かつて瀬戸内の海上交通の要衝として栄えた下蒲刈島では、豊かな自然を生かした全島庭園化事業「ガーデンアイランド構想」が推進され、その一環として整備されたのが「松濤園」だ。敷地内には三之瀬瀬戸の急潮を借景に、松の鮮やかな緑が浮かび上がる落ち着いた庭園が広がっている。古伊万里の名品を一堂に展示する「陶磁器館」をはじめ、朝鮮通信使の歴史を紹介する「御馳走一番館」、世界中の灯火器コレクションを楽しめる「あかりの館」、さらに、江戸時代には下蒲刈島に存在した御番所を復元した「蒲刈島御番所」の4棟の歴史的建造物が軒を連ね、静寂な時間が流れる中で、下蒲刈島の歴史と文化をじっくり学ぶことができる。

住所/広島県呉市下蒲刈町下島2277-3
☎️ 0823-65-2900
9:00~17:00(入館は16:30まで) 

火曜日(祝日の場合は翌日)休 
入園料:大人800円、高校生480円、小中学生320円
http://www.shimokamagari.jp

旧木上邸 【陶磁器館】 
建物は宮島にあった町屋を移築したもので、館内には国内外の陶磁器を数多く収蔵・展示している。鮮やかな中国や朝鮮の陶磁器のほか、初期伊万里から古九谷様式、柿右衛門様式、鍋島などの国内名品の数々が並び、その魅力にどっぷりと浸れる。三之瀬瀬戸の眺めを楽しめる観潮楼もある。

旧有川邸 朝鮮通信使資料館 【御馳走一番館】
江戸時代に朝鮮通信使の接待所となった下蒲刈島の歴史を紹介する施設。精密に再現された通信使船や行列風景の模型をはじめ、通信使の歓待で「安芸蒲刈御馳走一番」と絶賛された豪華な料理膳の復元や、通信使にまつわる歴史的な絵画・資料など、往時をしのぶ貴重な資料が立体的かつ多彩に展示されている。

旧吉田邸 【あかりの館】
山口県上関町で造り酒屋や醤油製造などを商いとしていた大庄屋の旧邸宅を移築。土戸やぶちょうといった貴重な建具が現存する館内には、国内外から集めた珍しいランプや灯火器を年代順に陳列している。世界有数とされるフェアリーランプのコレクションは必見。江戸時代の古い家具や生活用品も展示されている。

復元 【蒲刈島御番所】
瀬戸内海の要所だった下蒲刈島は、江戸時代には御番所が置かれ海上警固などを行っていた。残っていなかった当時の建物を、山口県上関町に現存する御番所で行った調査を基に復元。高札場、三道具、火叩棒、消火用水桶といった当時の常備道具や設備まで一緒に再現するなど、往時の姿を今に伝えている。


かつて海上交通の要所だったこの島には、美しい庭園がいっぱい。

01 白崎園

安芸灘大橋の近くにある展望公園。ウサギの耳のようなモニュメントは陶芸家・今井眞正氏の作品。約40品種が植えられたツツジ園も整備。


02 港町散策(三之瀬地区)

歴史ある港町の三之瀬地区は絶好の散策スポット。海沿いの道には石畳が敷かれて雰囲気満点。爽やかな潮風を浴びながら気持ちよく歩ける。


03 三之瀬御本陣芸術文化館

大名や公家などの往来時の宿泊所として使われていた御本陣の当時の外観を復元。内には、須田国太郎の油彩画をはじめ、近現代絵画陶磁器や工芸品なども企画展示している。
住所/広島県呉市下蒲刈町三之瀬311
☎️0823-70-8088 
http://www.shimokamagari.jp


04 福島雁木

広島藩主・福島正則が本陣を設ける際に船を着けるために築いた長雁木が現存。地元のガイド・三谷久司さんがその歴史や特徴を丁寧に教えてくれた。


05 海浪満

下蒲刈島の近海でその日の朝に獲れた生きのいい魚を〆て、鮮度抜群の状態で提供。魚はマダイやアジ、スズキなど、何が出てくるかはわからない。獲れたての新鮮な魚をタレに漬け込んで盛り付ける海鮮丼など、絶品メニューがそろう。
住所/広島県呉市下蒲刈町下島2361-7
☎️080-2348-5263


06 朝鮮通信使記念庭園

飛石や松を寄港地に見立て、朝鮮通信使が辿った航路を再現した日本庭園。隣には梶が浜海水浴場やコテージなどのアウトドア施設も整備されている。


07 梶ヶ浜遊園

朝鮮通信使記念庭園などとともに周辺一体は「観松園」と呼ばれ親しまれている。三之瀬瀬戸を借景に、松の緑が美しい落ち着きと潤いのある空間。


08 大平山

島の中央に佇む山。安芸灘大橋の雄大な景色を楽しみながら登れる。山頂付近にはかつて防空砲台があり、その跡が公園として整備されている。


広島県呉市下蒲刈島

Shimokamagari Island 面積:7.96㎢

本土からは「安芸灘大橋」で直結。島内には公園やキャンプ場などの施設が充実しており、瀬戸内海の眺望を楽しめる観光スポットとして広く親しまれている。
島を周回する海岸線の道は車も自転車も走りやすいものの、カーブが多い箇所があるので、スピードの出し過ぎには注意を。また、周囲の景色が美しいので脇見運転にも気をつけよう。


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