香川県高松市郊外、商業施設が立ち並ぶエリアに佇むNさま邸は、街なかにありながらもその喧騒を感じさせない、和の情緒溢れる住まいだ。家族は元は近隣の町に住んでいたが、同居のお母さまのことを考えて「築50年の一軒家では先々快適な暮らしができない」と、新居を求めた。家の設計は、京都に拠点を構える著名な設計士・横内敏人氏に依頼。ご主人は、「仕事上でのご縁もあり、家を建てるならこの匠の家が欲しいと思っていました」と家づくりを振り返る。高松市内から、時折京都へと足を運びながらも打ち合わせを行い、着工まで実に1年以上掛かったという。とは言え、家族構成や「2階建て」「ビルトインガレージ」など少しの要望を伝えた他は、全て設計士にお任せ。「この人なら」と、全幅の信頼を寄せた。緩やかに弧を描く瓦屋根と外壁の塗り壁に誘われて、鉄平石のアプローチを進む。玄関を抜け、室内へと足を踏み入れると、そこには木材をふんだんに用いた開放的な空間が広がっていた。屋根の緩やかな勾配が美しい部屋は中庭に沿うようにL字型に配されており、ダイニングの奥にある扉でお母さまの居住空間とをやんわり区切る。家族が集うリビングには、どこに座ってもテレビを見ながら火の揺らめきを感じられるよう角度を調整した暖炉があり、キッチン周辺に水回りを集約することで家事動線を考慮した間取りに。中庭に面する大きな掃き出し窓を開放すれば小鳥のリズミカルな声と心地の良い柔らかな風が舞い込み、深い庇で遮った夏の日差しが珪藻土壁を優しく照らす。ただただ縁側に座って景色を眺める、そんな穏やかな時間をこの家とともに重ねていく。
(PHOTO_小川 重雄)
建築実例データ | |
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創業以来、60年にわたって地域の工務店として木造住宅を手掛けてきました。全国的にも珍しい社員大工を多く抱える会社として、技術を生かした質の高い家づくりを目指しています。建てた時の満足以上に、建てた後、長きにわたって喜びを実現できる住まい、「時とともに深まる家」をご提案しています。
代表取締役 西尾 直樹