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SETOUCHI MINKAレポート

SETOUCHI MINKA

瀬戸内民家ジャーナル

2020/09/29
レポート ジャーナル
古民家礼賛。【旧野﨑家住宅】

温暖な風土に育まれながら、人々の生活とともに進化・発展を遂げてきた瀬戸内の民家。古より長い年月を経た現在でも、瀬戸内沿岸の各県には歴史的にも貴重な質の高い古民家が現存している。その数ある古民家の中から、「製塩業で財をなした実業家の広大な邸宅」を訪ねた。

旧野﨑家住宅

重要文化財岡山県倉敷市

製塩業で財をなした、大実業家の邸宅。

岡山県倉敷市児島にある「旧野﨑家住宅」は、江戸時代後期に新田開発と製塩業で大成した野﨑武左衛門が築いた邸宅だ。約3,000坪の広大な敷地には、主屋・表書院と6棟の土蔵が建ち並び、庭のあちこちに茶室が見られるなど、当時の栄華を物語る建物と庭園がほぼ当時のまま保存されている。2006年には国の重要文化財に指定された。

1838年に竣工した重厚な長屋門をくぐり真っ先に目に入ってくるのが、白漆喰になまこ壁が美しい土蔵群。向かって左から内蔵・大蔵・書類蔵・新蔵・岡蔵と内蔵後方に夜具蔵がある。一部は展示館になっており、製塩の歴史や江戸時代からの貴重な調度品などを展示している。

野﨑家が住まいの中心とした主屋は1833年ごろに建てられたもの。大工の技と苦心が至る所に垣間見られる見事な邸宅だ。主に平屋造だが一部2階建て。中座敷の広縁や台所の屋根に採光用の窓が取り付けられるなど、時代の変化とともに居住空間が進化しているのも特徴。主屋の印象をきりりと引き締める格式高い造りの座敷は、中座敷南端から向座敷北端までは9つの座敷が連続しており、襖を連ねる様は圧巻。その長さは約42mもある。

来賓を迎えるための表書院は、この邸宅の中心となる建物。1852年に竣工。上の間・下の間・茶室などで構成され、四方に一間の庇を付け、南と東には深い軒を設けることで、夏は直射日光を遮り、冬は日差しを採り込めるようになっている。各所の木材は地松や屋久杉、北山杉といった厳選した銘木を使用しており、洗練された床の間をはじめとする内部の意匠も相当手が込んでいる。波のうねりを象徴し黒の縁取りをしたデザインの欄間や、美しい造作の床の間が印象的。辺りは別世界にいるかのように静寂に包まれている。

主屋や表書院には木材を縦横に組む木舞打を用いた深い軒が設けられ、夏の日差しが照り付ける明るい屋外とは対照的に、室内は陰がかかり過ごしやすい。夏には日差しが座敷の中に差し込まず、冬は陽光を採り込んで部屋を暖かくするための工夫だといい、この技術は言うまでもなく、現代の「パッシブ設計」だ。

中座敷の南側にある茶室「臨池亭(りんちてい)」。このほか「観曙亭(かんしょてい)」「容膝亭(ようしつてい)」と名付けられた2つの茶室が建てられている。

【取材協力/公益財団法人 竜王会館】

旧野﨑家住宅

所在地/岡山県倉敷市児島味野1-11-19
開館時間/9:00~16:30 入館料/大人500円、小中学生300円
定休日/月曜日(祝祭日の場合はその翌日)、年末年始(12/25~1/1) ※無料駐車場有 問い合わせ/086-472-2001
詳しくはこちら

旧野﨑家住宅への訪問記事は

https://www.setouchiminka.jp/book/hiraya.html

2020/09/29
レポート ジャーナル
古民家礼賛。【宇野千代生家】

温暖な風土に育まれながら、人々の生活とともに進化・発展を遂げてきた瀬戸内の民家。古より長い年月を経た現在でも、瀬戸内沿岸の各県には歴史的にも貴重な質の高い古民家が現存している。その数ある古民家の中から、「女流作家が愛した美しい庭のある平屋」を訪ねた。

宇野千代生家

登録有形文化財山口県岩国市

日本人の琴線にふれる美しい庭、稀代の女流作家が愛した家。

山口県岩国市出身の文豪・宇野千代。ふるさと岩国を舞台にした『おはん』をはじめ、『風の音』『生きて行く私』など数々の名作を紡いだ彼女が生まれ育った生家が、「錦帯橋」から徒歩約20分の旧山陽道沿いにひっそりと建っている。明治初期に建てられた築約150年の小ぢんまりとした平屋は、1974年に千代の手によってほぼ昔のままに修復。国の登録有形文化財にも指定されている名宅だ。

旧山陽道沿いの岩国市川西地区にある「宇野千代生家」。明治初期の民家の佇まいを残しながら住宅街にひっそりと建っている。通りには千代の菩提寺である「教蓮寺」や、 古びた社などもあり、昔懐かしい雰囲気が漂っている。玄関にかかる表札は千代が自筆したもの。ベンガラ格子と白い漆喰の壁を備えた平屋。46年前に復元修理を手掛けた大工が、今でもベンガラの塗り替えや、建具の立て付け調整に訪れているそう。

千代が大好きだったという縁側から眼前に広がるのは、約100本もの紅葉が植えられた森のような庭。木漏れ日が差し込み、春の新緑から晩秋の燃え盛るような紅葉まで、四季を通じて多彩な美しさを見せる。この息をのむような格別の景色に誰もが思わず見とれてしまう。縁側にひとり腰掛け、庭の景色を静かに見つめながら2時間近くも物思いにふける来館者もいたという。

庭を眺めながら執筆活動をしていた文机もそのまま残されている。原稿用紙とそれを押さえる文鎮代わりの刀のつば、その脇に6B鉛筆が置かれている。千代愛用の湯飲み茶碗には、今でも毎日茶が注がれている。 

生家は2005年から一般に公開。千代の直筆原稿やゆかりの貴重な品々が多数展示されている。千代の作品を愛する人にとってはこの生家は聖地。大勢のファンが全国各地から訪れている。NPO法人のメンバーが毎日交代で邸内を隅々まで清掃。来館者の案内までボランティアで行っている。

約300坪の敷地内に広がる庭。紅葉の木は千代自身の手によって植えられ、枝の剪定はせず、そのままに育てることを好んだという。庭には瓦を縦にして地面に埋めた小道があり、千代はわら草履をはいて毎日歩いたのだとか。小道の途中には、地元のファンが「錦帯橋」の掛け替えの際に不要となった古い端材で作ったベンチが置かれている。紅葉が濃い赤や黄色に染まる晩秋の庭の美しさは格別。毎年11月には「もみじ茶会」が開かれ、野だての抹茶と千代の好物だった「いが餅」がふるまわれる。

【取材協力/NPO法人 宇野千代生家】

宇野千代生家

所在地/山口県岩国市川西2-9-35
開館時間/10:00~16:00 入館料/大人310円、小中学生100円、障がい者100円
定休日/火曜日(祝祭日は開館)、年末年始 ※無料駐車場有 問い合わせ/0827-43-1693
詳しくはこちら

宇野千代生家への訪問記事は

https://www.setouchiminka.jp/book/hiraya.html